木ままニュースペーパー
住宅ローンの借りすぎはやばい?返せる額から逆算する借入額の適正ライン
2026.10.15
借りられる額に安心しないために、教育費や修繕費まで含めて返せる額を決める考え方
住宅ローンの借入額は、審査で通った額ではなく、返し続けられる額で決めるものです。金融機関の審査は額面年収と返済比率で上限を計算しており、教育費や車の買い替え、家の修繕費までは見ていません。だから「借りられる額」と「返せる額」の間には、数百万円単位の差が生まれます。事前審査の結果を受け取った夜、「思ったより枠が大きい」「本当に返せるのか」「借りすぎって月いくらからなのか」と、検索窓に同じ言葉を打ち直した方は多いはずです。この記事は、審査額の計算のからくり、教育費・車・修繕費まで含めて返せる額を逆算する手順、借入額を判断する基準の順に整理します。読み終える頃には、金融機関が出した数字ではなく、自分の家計の数字で借入額を決める材料がそろいます。
【この記事のポイント】
- 審査の上限額は額面年収と審査用の返済比率で決まり、教育費・車・修繕費は計算に入っていない
- 返せる額は手取り月収から固定費と将来の積立を引いて逆算し、生活パターン3つで試算する
- 借入額の判断基準は5つ。1つの金融機関・1社の資金計画で即決せず、同じ条件で比較する
この記事の結論
- 審査に通った額は「貸せる上限」であって「返せる額」ではない。
- 返済の目安は手取り月収の20〜25%以内。審査上の30〜35%とは別物。
- 教育費・車・税金・保険・修繕費を月割にしてから返済額を決める。
- 現状・教育費ピーク・収入1割減の3パターンで試算する。
- 金利上昇時の返済額の増え方まで確認してから金額を確定する。
- 借入額の減額は本審査前なら十分間に合う。増額より減額のほうが簡単。
審査に通った額が、そのまま返せる額にならない理由
審査の返済比率は額面年収で計算されている
金融機関の事前審査は、額面年収に対する年間返済額の割合、いわゆる返済比率で上限を判定します。多くの場合、この比率は30〜35%です。額面年収600万円なら、年間180〜210万円、月15万円前後の返済まで「貸せる」計算になります。
ここに最初の落とし穴があります。額面600万円の手取りは、税金と社会保険料を引くとおおむね460〜470万円。月15万円の返済は、手取りに対しては38%前後に達します。手取りの4割近くを住宅に充てて、子育て世帯の家計が回るか。正直なところ、かなり厳しい数字です。
家計相談の現場でよく使われる目安は、手取り月収の20〜25%以内。額面ベースの審査上限とは、10ポイント以上の開きがあります。この差が「借りられるのに返せない」が起きる構造です。
教育費・車・修繕費は審査項目に入っていない
審査が見るのは、年収、勤続年数、他の借入、年齢といった項目です。子どもが何人いて、何年後に教育費のピークが来るかは、原則として計算に入りません。
具体的に月割へ直すと、規模感が見えてきます。よくあるのが、子ども2人の塾と習い事で月3〜5万円、車1台の維持費と買い替え積立で月3〜4万円、外壁や給湯器に備える修繕積立で月1〜1.5万円。固定資産税と火災保険も年間で15〜20万円程度は見ておく必要があります。合計すると月8〜10万円。審査には出てこないのに、返済と同じ口座から確実に出ていくお金です。
2026年初めに相談に来られた総社市の30代ご夫婦(4歳と1歳のお子さん)は、希望3,200万円で事前審査を出したところ、4,200万円の枠が提示されました。「あと1,000万円足せるなら」と土地と設備の希望を広げかけたそうです。ところが夫婦で家計を書き出してみると、増額後の返済は手取りの28%。児童手当と学資保険、保育料の先まで並べた表を見て、奥さまが「通ったんだから大丈夫だと思っていました」とつぶやかれたのが印象的でした。最終的には3,400万円に落ち着いています。
金利も収入も、35年間同じではない
住宅金融支援機構の2026年1月調査では、住宅ローン利用者の75.0%が変動型を選んでいます。一方で、今後1年間に金利が上がると考える人は73.7%に達し、金利上昇時に返済額がどれだけ増えるかを十分理解していない層が52.0%を占めました。多くの人が「上がりそうだと思いながら、増え方は把握していない」状態で借りている。これが実態です。
同機構の2025年調査では、金融政策の変化を受けて44.3%が住宅取得の計画に変化があったと答え、借入額の削減や返済期間の見直しが挙げられています。日銀の地域経済報告でも、資材価格の高騰と人件費の上昇で建築コストが増えている局面が示されており、総額が膨らみやすい今こそ、借入額側の点検が要ります。
収入も一定ではありません。育休や時短勤務で世帯収入が1〜2割下がる時期は、子育て世帯ならほぼ確実に来ます。ケースによりますが、その時期と保育料の負担は重なりがちです。上限いっぱいの借入は、この変動の余地を最初に消してしまいます。
返せる額から逆算する手順と、借入額の判断基準
手取りベースで3つの生活パターンを試算する
手順は単純です。まず手取り月収を出す。次に、住居費以外の固定費、教育費、車と修繕の積立を引く。残った額から貯蓄分を確保し、返済に充てられる上限を決める。この金額を先に固定してから、借入額を逆算します。月10万円返せるなら、金利や期間にもよりますが借入はおおむね3,000万円台前半が目安になります。
試算は1本ではなく3本つくります。①現状の収支、②子どもが中高生になり教育費がピークになる年、③収入が1割減った場合。最初は半信半疑でも、③のパターンを紙にすると判断が変わる方が多い。数字が並ぶだけで、「枠いっぱい」の危うさが具体的になるからです。
もし今、事前審査に通ったばかりで金額を決めかねているなら、この3本の試算を持って第三者に見てもらう段階です。契約前ならまだ十分間に合います。木ままの相談(https://www.kimama218.jp/soudan/)でも、土地と建物の総額を並べた資金計画の持ち込みを受けています。
借入額の判断基準は5つ。どの金融機関にも同じ質問を
借りすぎが不安になるのは当然ですし、その感覚は間違っていません。そこで、どの金融機関・どの住宅会社の資金計画にも使える判断基準を5つ挙げます。
- 返済額は手取り月収の25%以内に収まっているか。
- 教育費ピークの年の年間収支が赤字にならないか。
- 車の買い替えと維持費を月割で織り込んだか。
- 固定資産税・保険・修繕積立を年間コストとして見たか。
- 金利が1〜2%上がった場合の返済額を確認したか。
この5つに数字で答えられる資金計画なら、金額の議論を根拠ベースで進められます。「皆さんこのくらい借りていますよ」で終わる説明なら、材料が足りていません。1つの銀行、1社の提案で即決せず、同じ質問を複数にぶつけて回答を並べることをおすすめします。
比較した人が確認したこと。金額を決めるまでの3か月
2025年冬に着工した倉敷市の30代後半のご夫婦は、金額の確定に3か月かけました。1か月目、家計簿アプリの1年分から固定費を棚卸しし、手取りと支出を一覧にする。2か月目、銀行2行と住宅会社、独立系FPに同じ試算条件を渡し、返済プランを並べて比較する。3か月目、教育費ピーク年の収支表を見ながら夫婦で上限額を確定する、という流れです。
共働きで車2台が必須のご夫婦でした。7年ごとの買い替え費用を月割2万円の積立として試算に入れた結果、当初案から借入を500万円減らして3,000万円に。ご主人は「怖かったのは金利より車でした」と話されていました。木ままを選ばれた理由も、間取りの提案より先に、この試算に付き合って総額を一緒に削る調整をしたことだったそうです。
引き渡しから半年後に伺ったとき、奥さまが「外食のとき、会計前に電卓を出す癖がなくなりました」と笑っていました。返済に追われない金額設定は、こういう小さな場面に表れます。
よくある質問
Q1. 返済比率は何%までなら安全ですか?
A1. 手取り月収の20〜25%以内が目安です。審査で使われる額面30〜35%は貸す側の上限であり、家計の安全ラインではありません。
Q2. 年収600万円ならいくらまで借りてよいですか?
A2. 審査上は4,000万円超が出ることもありますが、手取り25%基準なら3,000〜3,300万円前後が目安です。教育費と車の条件で上下します。
Q3. 借りすぎのサインはありますか?
A3. 手取り比28%超、ボーナス返済への依存、入居後に貯蓄残高が減り続ける、の3つです。2つ当てはまるなら減額を検討すべき水準です。
Q4. 頭金を増やして借入を減らすべきですか?
A4. 生活費6か月分と直近の教育費を手元に残すのが先です。手元資金を空にする頭金は、修繕や収入減のときに借入より高くつきます。
Q5. 借入額を減らすと、家の希望を諦めることになりませんか?
A5. 総額の1割程度なら、土地の広さ・延床・設備の優先順位づけで調整できる場合が多いです。後から変えられる部分から見直すのが原則です。
Q6. 変動金利と固定金利はどちらが安全ですか?
A6. 型の優劣より、金利上昇時に家計が耐えるかの確認が先です。利用者の52.0%が返済額の増え方を十分理解していないという調査もあります。
Q7. 事前審査に通った後でも借入額は減らせますか?
A7. 減らせます。本審査前の減額は増額より手続きが簡単で、審査にも通りやすい方向の変更です。金額確定前が動きどきです。
Q8. 誰に相談すればよいですか?
A8. 銀行、住宅会社、独立系FPの3方向に同じ試算条件を出すのが確実です。1か所の数字だけで決めないことが、そのまま借りすぎ対策になります。
まとめ
この記事のまとめ:要点3つ
- 審査額は額面年収ベースの貸せる上限。教育費・車・修繕費を引いた手取りベースの返せる額とは別物
- 手取り25%以内・教育費ピーク年・収入1割減の3条件で試算してから借入額を確定する
- 判断基準5つに数字で答えられる資金計画を、複数の相手から集めて比較する
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